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5.イカの資源利用

さきに述べたように「資源」として人間が利用しているのはコウイカ科、ヤリイカ科、アカイカ科(スルメイカ類)の三大科に属するものですが、将来地球上の蛋白質供給が人口増加に追いつかなくなったら、その他の頭足類だって利用しなけれぱならないかもしれません。また、直接でないにしてもイカを常食とする大型捕食者の生産量はイカ資源の大きさにかかっているともいえます。

いろいろな学者がこれまで地球上に存在するイカ類の全資源量を最低2000万トン、最高3億トンと見積もっていますから、あいだの1〜2億トンというところが真相でしょうか。
そのうち現在の漁法、利用法で人間が、「資源」として利用しているものはFAOの統計によるとわずか200万トン強ですからその1/50〜1/100ぐらいしか獲っていないことになります。そのうち日本は自分の手で獲るのと、輸入に頼っているのと合わせて75万トンぐらいのイカを消費しているのです。
コウイカ類はかつて日本近海だけでは足らずにアフリカ沿岸やアデン湾などにまで日本漁船が獲りに行きましたが、ヤリイカ類とともにこの仲間は沿岸にくっついて生活をしているので、現在の200海里経済水域制が確立するともう合併でやるか、輸入によるしかありません。現在は日本漁船は外国でコウイカ類もヤリイカ類も獲りに行っておらず、少量をアフリカ.ヨーロッパから、また大量に東南アジア(主としてタイ)から輸入しています。この辺ではタイ湾は有数のイカの生産地で、丸でも、ロールでも、「げそ」ででも冷凍輸入されています。

経済水域外で日本が自分の手で獲れるのは外洋性のアカイカ科(スルメイカ類)です。しかし日本のスルメイカがそうであるように近似種のオーストラリアスルメイカ、ニュージーランドスルメイカ、カナダまついか、アルゼンチンまついか、などの種はたしかに一時期陸を離れて公海上に集まるので、経済水域と関係なく釣ることができますが、再生産の場はやはり陸棚上、経済水域内にある場合が多く、そうなると徹底してイカ群を追いかけることはできないうらみがあります。
そのような”半外洋性”のものとは異なり、陸に関係ない生活史をおくるいわば”純外洋性”のアカイカやトビイカは公海上で漁業活動ができます。トビイカは太平洋からインド洋の暖水域にはどこでもいて、船に驚いて飛んだりしますが、あまり濃密な群れは作らないので人間の経済活動でもある漁業と結びつきません。それに比べるとアカイカは餌を求めてかなり冷たい方へも行こうとし、その時前線などに阻まれて次から次に来る群がそこに滞ってしまい大集群となるので、好い漁場が形成されます。そこで初めのうちはスルメイカと同様に釣られていましたが、大きな雌などは釣り上げるのが大変で、流し網で大量に漁獲され、それが加工用の需要をまかなっていました。ところがそこにサケや海鳥や海獣のからまる被害が出るというので前代未聞の国連決議のモラトリアムを迎え、再び釣りなどの方に転換を強いられる結果となりました。

資源に与える影響としては、一網打尽の綱より、あるサイズの特定種のみをごぼう抜きする釣りの方が良いのかもしれませんが、技術革新によりイカ群を探索したり、釣獲する能力は年々向上しています。現に沿岸のスルメイカが釣りのみで一時乱獲に陥った実績もあるほど性能がアップしているから油断はできません。
公海資源としてはまだ南半球に可能性を残しているように思えます。また国際協調の上、利用し得る沿岸資源は東南アジア、オーストラリア、アフリカ、カリブ海などに候補種があります。
日本近海でもいまだに新資源の開発が続けられています。例えば日本海に迷い込んだものを空釣りぐらいで釣っていたソデイカは、もっと上流の沖縄付近では近年かなり本格化した漁獲対象となっています。また、富山湾名産のホタルイカが、山陰地方では底曳によって漁獲利用されたり、身が軟らかいので顧みられなかったドスイカが再評価されるなど、なおイカ資源の未来は閉ざされていません。

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[出典]イカの春秋 付録「イカって何?−イカの生物学即席知識」:奥谷喬司著より抜粋(成山堂書店)
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