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分類上の位置 イカの種類 イカの体 イカの一生 イカの資源利用
2.イカの種類

前節で述べましたように、イカは大別して、コウイカ類(分類上は目という)、ツツイカ類に二大別されますが、前者には5科、後者には28科の計33科含まれています。
深海とか、南極とかの特殊な地方や場所に棲んでいるものや、小型や稀産のため到底食用資源にならないものは市場でお目にかかることはまずありません。通常市場で見られ、食膳に上がるのは上記33科中、コウイカ科、ヤリイカ科、アカイカ科(スルメイカ類)の3科に絞られるとみてよいでしょう。日本のみではさらにホタルイカ、ソデイカ、ドスイカのように上の3科に属さない3種が食用とされますが、世界の市場に現れるイカは3科いずれかに属しています。
コウイカ科のイカは舟形の石灰質の甲をもつところから「甲烏賊」の名がありますが、日本で最もポピュラーなのは釣り人は「墨いか」、地方によっては「針いか」とか「まいか」というコウイカそのもので、胴長16センチメートルぐらいになります。この頃サンゴ礁に卵を産むシーンなどがよくテレビにでてくるのは琉球諸島の以南の島々に多いコブシメというコウイカ科の巨大な一種です。巨大といえば、房総半島以南、とくに東シナ海から東南アジア方面にかけて獲られるカミナリイカという胴長が40センチにもなるコウイカ科の一種があります。この種はコウイカ科にありがちな背中の虎斑模様の間に眼を描いたような紋が散在するので、南西日本では「紋甲いか」と呼ばれていました。

ところが昭和35年ごろから日本の遠洋漁船がもたらした大西洋産ヨーロッパコウイカを市場で「もんごういか」と呼び始めて以来、その名はすっかりそっちに行ってしまい、あまつさえ最近東南アジアから輸入されるコウイカ類にも「もんごういか」の名が使われて、もう今やそれは「海外のコウイカ類」を指す市場名のようになり、実体から遠く離れてしまいました。ヤリイカ科に属するイカは細長く、鰭は長い菱形をしています。どの種も沿岸を回遊し、寒天状の袋に入った卵を産みます。日本ではヤリイカ(「ささいか」、「てなし」「てっぽう」などの地方名がある)とケンサキイカ(地方によっては「白いか」、「赤いか」、「めひかり」など)が重要2種でヤリイカは北海道南部まで、ケンサキイカは日本の西半分に漁場があります。鰭が丸いのでコウイカ類とまちがわれそうなアオリイカ(地方名「水いか」「藻いか」「ばしょういか」「くついか」など)も実はヤリイカ科で、甲のかわりにササの葉状の軟甲をもっています。ヤリイカ科のイカも東南アジアに中、小の種類が多数います。かつてはカナダ東岸や、ヨーロッパからも入って来ていました。日本の場合、定置網などに入る小型種も利用されていて「火いか」とか時には「丸いか」とか思いつきの名前をつけられてローカルな市場に出ています。



やはり大規模、大資本による大漁業は外洋性のアカイカ科すなわちスルメイカ類をおいて見られません。最近国連決議でモラトリアムになった公海流し網でとられていたアカイカ(「紫いか」)はその代表種で、日本だけで約20万トン獲っています。この科に属するイカは、11属22種ありますが、本格的漁業の対象になっているのはこのうち半分強の14種程度です。いずれも食用となるべき筋肉に富んでいて中・大型で、特に索餌期において大集群を作ります。鰭はヤリイカ科のように縦長の菱形でなくむしろ幅の方が広いダイヤモンド型で、背中に黒い線が縦走しているのが本科の特徴です。
わが国でかつては単一種で約70万トンとれたスルメイカは南西日本で生れ、北上回遊したのち南下するという1年の一生のうちに日本列島を縦断します。前記のアカイカは陸から遥かにへだたった渺々たる外洋にいますが、スルメイカは何となく日本列島にくっついた分布をするので、同じ科内でも僅かに性質が違います。

一時はニュージーランド近海、オーストラリア近海、更にはカナダの大西洋岸から、また最近はアルゼンチン沖、あるいはフォークランド諸島付近から日本の大型釣り船が出かけて行った大量の本科のイカを日本にもたらしました。それらはいずれもその場所によって種類が異なるとはいえ、なじみ深いスルメイカに瓜二つのイカたちです。業界ではどういうものか、海外のスルメイカ類を「まついか」と呼びます。日本では函館のイカ釣り船の集魚灯が幻想的な観光名物になっていますが、イカなどは「海のゴミ」と思っていたニュージーランドの人々は、昭和45年ごろ日本の遠洋いか釣漁船が大挙してニュージーランドスルメイカ(「ニュージーまついか」)を釣るため押し寄せ集魚灯によってそれまでまっ暗だった夜の海が真昼のようになって大いに驚いたといいます。またフォークランド沖で釣れるようになったアカスルメイカ(市場では「アルゼンチンむらさきいか」)は生鮮より加工用にまわされてしまいますが、それなど日本漁船が何千トンと釣るまではパリの博物館に100年間保存されていたのが世界で唯一無二の標本でした。かくして世界の“珍奇種”はもはや食糧資源になってしまったという歴史もあります。
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[出典]イカの春秋 付録「イカって何?−イカの生物学即席知識」:奥谷喬司著より抜粋(成山堂書店)
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